総会・理事会に関すること
総会は、区分所有者(組合員)の意思決定の場であり、組合活動の一丁目一番地、出発点でもある大変重要なものです。
総会は区分所有法では「集会」(65条)といいます。
総会には「通常総会」と「臨時総会」の二種類があります。
ここでは総会の招集・種類・規定、総会に関連する委任、議決権などについても解説します。
理事会は理事によって構成されます。
理事会の招集・規定などについて解説します。
総会
通常総会と臨時総会
総会には「通常総会」と「臨時総会」の二種類があります。
毎年1回、必ず開催(招集)しなければならないのが「通常総会」、それ以外を「臨時総会」と言います。
通常総会
通常総会は年に1回、5月に理事長が招集します。
(規約25条)
理事長は通常総会で前会計年度の管理組合業務の執行に関する報告を行わなければなりません。
(区分所有法66条・43条・標準管理規約団地型44条)
総会の招集手続
総会を招集するには、総会を開催する1週間前(建替え等は別途の規定)までに、開催の日時・場所・目的を示して、組合員に通知しなくてはなりません。(規約24の2)
緊急を要する場合は理事長は理事会の承認を得て、5日間をくだらない範囲で、招集通知の期間を短縮できます。(標準管理規約団地型45条9)
理事長だけでなく一般組合員も臨時総会を招集できます。
組合員の5分の1以上で議決権の5分の1以上を有するものは、理事長に対して会議の目的たる事項を記載した書面を提出して、総会の招集を請求する事ができます。(規約27条)
総会の議決事項
1. 組合規約(規約に基づき定めた協定を含む。以下同じ)の変更又は廃止。
2. 細則の設定、変更又は廃止
3. 組合管理共有物の処分、変更又は改良に係る方針の決定
4. 役員の選任又は変更
5. 役員の報酬の決定又は変更
6. 組合費等の金額の決定又は変更
7. 組合の収支予定計画の決定又は変更
8. 組合の収支決定報告
9. 組合の運営又は業務執行に係る基本的な方針の決定又は変更
10. 組合業務の委託等の変更又は廃止
11. その他の組合共有物の管理及び使用に伴う組合費の共同利益に係る基本的な事項
議決権
議決権
議決権(区分所有法66条・38条)とは、組合員が総会の決議に参加して票を入れる事ができる権利です。
総会の決議に票を入れる事を「議決権行使」といいます。
当団地の場合議決権は規約19条により、所有する住居一戸につき一個の議決権を有します。
一戸の住居を複数人で所有している時は、代表者を定め行使するものとします。この場合、予め管理組合に届け出が必要です。
議決権の取り扱い
議決権は組合員が組合に対して意思表示をする大切な権利であり、管理組合の運営を左右するものです。
「議決権行使書」を採用する場合は、予め議案の丁寧な説明と周知が必要となります。
議決権行使は取り扱い方によっては、公平・公正を欠く可能性があります。その様な事が無いように、議決権行使に関しては、慎重に取り扱う必要があります。
議決権行使書については、下記に別記にて説明します。
委任と代理
委任者と受任者
当管理組合の総会においても、総会に出席できない場合は「委任状」を提出します。
本来自分で行う行為を、自分の代わりに他の人に頼んでやってもらう事を「委任」と言い、頼みを受ける事を「受任」と言います。
頼んだ人の事を「委任者」、頼みを受けた人の事を「受任者」と言います。
委任状
委任と受任は当事者同士の意思表示で成立しますが、第三者に対しては証明できません。そこで必要になるのが「委任状」です。
委任状には委任者と受任者が誰なのか、委任の内容と範囲、日付、委任者の記名押印がされます。
委任状を提示する事で、第三者は委任者と受任者との間で、委任契約が成立している事を知る事ができ、法的に証明書(証拠)にもなります。
受任者は代理人
委任者から委任された内容を承諾すると受任者になります。受任者は委任者本人に成り代わって、委任された(受任した)内容を実行(法律行為)します。この事を代理行為と言い、代理行為をする人(受任者)の事を代理人と言います。
代理行為できる内容と範囲(権限)は、委任された事柄に限ります。
代理人は本人と同じ
委任されて代理人が行った行為や意思表示は、本人が行った事と同じです。法律的に言うと、代理人が行った行為は、本人に及びます。(民法99条)
白紙委任状
白紙委任状とは、委任者と受任者の記載はあるものの、委任内容が全く書いていないものです。
前述した通り、代理人が行った行為は委任者本人に及びます。委任状に何も書かれていない委任状を持った代理人が行った行為は、本人が行った事と同じですから、その責任は本人が負う事となります。
例えば白紙委任状を持った代理人(受任者)が委任者本人に成り代わって勝手に物を購入した場合、委任者本人は、その代金を支払う義務を負う事になります。
こうした事から、白紙委任状を発行すると、代理人が行った行為に責任を負わなければなりませんから、安易に発行すべきではありません。
理事会
理事会
規約38条
管理組合の最高決定機関は総会です。総会で決議された事項を理事長が執行する事になります。総会は年に1回しか開催されませんから、理事長が執行できる事が限られてしまい、管理組合運営が硬直してしまいます。
そこで規約で理事長の権限を広く定めています。これによって管理組合の運営は柔軟かつ機動的に運営できます。
しかしそれでは理事長の権限が大きくなりすぎてしまい、時には誤った判断をする懸念が生じます。
そこで機動性を確保しつつ、弊害を防止する為に理事をもって理事会が構成され、複数の理事による検討の機会を確保し、管理組合運営を適正化する為の審議・決議を行うのが理事会です。
理事会の招集と決議
規約38条
理事会は理事長が招集します。
当管理組合では、毎月1回、第二土曜日に理事会を開催し、理事長が議長を務めます。
理事会は、理事長、副理事長、理事の半数以上が出席し、議事は出席理事の3分の2以上で決します。(監事・自治は理事ではありません。)
毎回理事会で出席を取り、人数を確認するのはこのためです。
監事は役員ではありますが理事ではありません。監事は理事会の出席メンバーではありませんが、理事の職務執行を監査する為に理事会に出席します。したがって監事は、理事会の議決権を持ちません。
理事会の決議事項
1 収支決算案、事業報告、収支安および事業計画案。
2. 規約および使用細則等の制定、変更または廃止に関する案
3. 長期修繕計画の作成または変更に関する案
4. その他総会提出議案
5. 区分所有法17条(専有部分の修繕等)に定める承認または不承認。
6. 区分所有法67条(法令、規約等に違反する場合)に定める勧告または指示等
7. 総会から負託された事項
などが挙げられます。
当管理組合規約においては、
1. 総会の議決及び規約等に基づき組合員の組合管理共有物の管理及び使用に伴い共同利益となる軽易な事項
2. 緊急時の預金の移動を決定し処理
3. 自治活動に関する組合業務の方針・計画・予算の算定についての審議処理
が定められています。
注意事項
当管理組合では、規約38条2により、自治活動に関する組合業務の方針・計画・予算の算定について理事会で審議処理する事となっているため、慣例として理事会に自治担当が出席していますが、自治担当は理事ではありませんから、法35条および51条・規約33条および38条6により、理事会の議決権を有しません。
議決権行使書
議決権行使書とは
議決権は組合員が総会で決議に票を入れる事ができる権利です。議決権行使書は、議案の賛否および棄権の意思を書面にし、文字通り議決権を行使する物です。
総会に出席しないと議案の決議に参加できません。しかし、議決権行使書があれば総会に出席しなくても、決議に参加する事ができるのです。議決権行使書は、議案の賛否及び棄権の意思を書面で示し参加するものです。
もうひとつ欠席した総会の議決に参加する方法があります。それは、委任状を作成して、代理人に決議に参加してもらう方法です。しかしその場合、決議の賛否および棄権の意思は代理人にゆだねてしまうので、自分の意思が決議に反映されない事があります。
議決権行使書の利点
議決権行使書の利点は、総会に出席しなくても、書面で意思表示ができる事です。都合でどうしても総会に出席できないと、意思表示ができません。しかし議決権行使書があれば、書面で意思表示する事ができるのです。
総会を招集した側にとっても、出席者が既定の数に達せず、総会が不成立になる事が防げます。
議決権行使書の欠点
議決権行使書は、その取り扱に注意すべき事があります。
たとえば、議案の事前の説明が不十分で、総会において議案に対する新たな説明や懸念点があった場合、出席者がその場で賛否を変更する事があります。
しかし事前に議決権行使書を提出した欠席者は、意思を変更する事ができません。
総会で議案の審議で疑義があり、出席者の過半数が議案に反対したにも関わらず、十分な説明を受けていない議決権行使書では賛成が上回る事があります。この場合、単純に賛成多数で決議してしまいます。議案提出者がこれを利用して、議案を通してしまう懸念があり、公平・公正が担保できません。
もしかしたら、欠席者が実際に出席していたら、反対の意思を示し、反対が過半数になる可能性が高いと言えます。
もしも総会の審議の中で、新たな説明が必要になったり、懸念が生じた場合は、その決議を保留し、次回の総会、または別途臨時総会を招集して採決をとる事で、公平・公正を担保する事ができます。
議決権行使書と委任状のちがい
議決権行使書は、自分の意思をそのまま表明するもの。一方委任状は、自分の意思を他人(代理人)に委ねる事になります。
委任状の場合は、代理人の意思に委ねる事になりますから、代理人が自分(本人)とは反対の意思表示をしたとしても、その意思表示は、本人(自分)がした事と同じ事になってしまうのです。
一方議決権行使書は、自分の意見をそのまま表明するものですから、代理人と意思が相違する事がありません。
自分の意思を示すのならば委任状では無く、議決権行使書を提出する事が肝要です。